「平田家住宅」福岡県 /“Hirata Residence 'garden” Fukuoka-pref

「平田家住宅」福岡県小郡市

福岡県小郡市では大正から昭和初期にかけて活躍した庭師・松尾仙六(1889~1961)が再発見され再評価が進んでいる。松尾仙六の作品は、福岡県小郡市に9庭(うち7庭が現存)隣の佐賀県鳥栖市に5庭(現存数不明)が確認されている。小郡市の消失した作品の一つは久光製薬の創業一族・中冨家の庭園が含まれ惜しまれる。これ以上庭園の消失が進まないよう建築と合わせて保存運動が始まった。

 現在一般に公開されている松尾仙六の庭園は、小郡市の平田家住宅庭園のみ。庭園は建物とともに修復中で見学者にとっては良い条件ではない。池の水は涸れ、庭木は大きく成長しすぎ太い幹が視界を遮り、修復のための資材が庭内各所に置かれ、景観は著しく損なわれている。しかし、少しの知識と想像力があれば本来この邸と庭が持っている美しさを感じ取ることは充分可能だ。知識と想像力を友として庭を見ていこう。

 平田家住宅庭園は平庭の池泉廻遊式庭園。まず庭の奥にそびえる高さ3mにも達するかと思われる巨石に圧倒される。この巨石は採石現場で一度バラバラに分解されここまで運ばれ再びこの庭で接合された。石を再接合した際に接合部の割れ目が美しくなるよう、あらかじめ採石現場で石を割る時に繊細な配慮がなされている点。同じように分解され再接合された大立石を大名庭園などに例があるが、この平田家住宅ほどの大立石は個人邸宅では全国的にも珍しい。石の割り方も非常に繊細で庭師・松尾仙六の美意識の高さを物語っている。この大立石は滝石組だ。かっては実際に水が落ちていたそうだが現在では枯れている。庭内にはこの滝石組の他にも分解され運ばれてきた巨石が幾つも置かれている。それらが山々として見立てられているので、この庭にはあえて築山は作られていない。次に目に止まるのは池の上に架かる木造の太鼓橋だ。優雅な曲線は擬宝珠を持つ欄干の曲線と重なり合い美しい。建築的には足元の柱と礎石の結合部には控えめながら「光付け」の技法が見られるが、これ見よがしでない品の良さを感じる。その太鼓橋を渡った先にはさながら寺社建築かと見まごうばかりの立派な離れが建っている。濡れ縁の上を軽やかな薄いひさしが覆い、その先端は翼のように反って華麗だ。竿のない春日燈篭が池の中に置かれ一際存在感を放つ。さらに太鼓橋の下を斜めに点々と横切る飛び石がリズミカルで楽しい。

すでに修復を終え見学可能な賓客のための建物の一番奥の座敷から庭を眺めてみると、外側のガラス戸には大正時代中期以降に多く使われた「結霜(けっそう)ガラス」がはめ込まれている。ガラス戸の中央だけ透明になっているので、額縁に切り取られたような「ちょい見え」の庭園を楽しめる。透明ガラスの枠の中には太鼓橋や石灯籠が主役として入るようにあらかじめ計算されており、建築と庭が固い絆で結ばれた一つの総合芸術である事がよくわかる。次に窓を開けて庭全体を眺めよう、するとそれはなんとも壮大な自然の風景に見えてくる。巨石は聳え立つ山々となりその裾野の大地に川が流れ湖が広がっている。一番奥の滝石組の手前を横切る渡り廊下と太鼓橋は、庭内で唯一人工的な景物だが寝殿のような趣で庭の品格を高めている。石は手前ほど低く奥に行くほど高くなり滝石組を頂点として安定した三角構図を描いている。そもそもこの座敷から眺める庭が一番奥行きも広さもあるのだが、石や橋や灯籠の配置によって実際以上の遠近感と奥行きを巧みに創り出していて、松尾仙六の技量の高さを物語っている。

◼︎名称:「平田家住宅」

◼︎住所:福岡県小郡市小郡1155

◼︎TEL: 0942-73-1510 NPO法人文化財保存工学研究室

◼︎休館日:日・祝・月

◼︎営業日:AM 9:00~PM4:30

◼︎駐車場:2台

“Hirata Residence 'garden”Ogori-city Fukuoka-pref.

In Ogori city, Fukuoka Prefecture, the gardener · Senroku Matsuo who was active in the early Taisho era ~ early Showa era was rediscovered, and the garden he made was reevaluated. The characteristic of his garden is the dynamism of putting megalithes. He used a technique to carry stones that were dismantled into many parts at the quarry site to the garden and reconnect them again. The method of this megalith is also seen in "DaimyoTeien" Okayama · Korakuen "and" Kagoshima · Shimadu Tamazato Betttei “e.t.c. However, there are few examples of such megaliths in the private garden. The garden of Senroku Matsuo which is currently open to the public is only "Hirata Residence" in Ogori city. Hirata Residence 'garden is still restoring, it takes a while to complete. And the water of the pond withered, the garden tree grows bigger and the garden landscape is not a good situation. But if you have a little knowledge and imagination about the garden, you will see the splendor and beauty of this garden.

◼︎Name: "Hirata Family Residence"

◼︎Address: 1155 Ogori, Ogori City, Fukuoka Prefecture

◼︎TEL: 0942-73-1510 NPO Cultural Property Preservation Engineering Laboratory

◼︎Closed: Sundays, holidays, and Mondays

◼︎Opening hours: 9:00AM~4:30PM

◼︎Parking: 2 spaces

日本庭園       The japanese gardens

九州と中国地方の日本庭園を紹介するサイトです。 This site introduces Japanese gardens in the Kyushu and Chugoku regions of western Japan with beautiful photographs and explanations in Japanese and English.

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